| essay-気の向くままに |
女同士のおしゃべりって取り止めがなく、それが二人の会話となるとたいてい他の人の噂や悪口というのが、悲しいけれどお決まりのパターン。こういうのって知らない人が傍で聞いていても不愉快ですね。 その「女同士」の「とりとめない」おしゃべりや「人の噂」なのに不快感がなく、それどころかまるで漫才を聞いているみたいに楽しくさせてくれる「仲良しおばさん」たちに出会いました。 身延線のどこの駅だったか忘れましたが、私の座席の向かい側に70歳代の女性二人が並んで座りました。仮にAさんとBさんとにしましょう。化粧気は無く、普段着の普通のいなかのおばさん。花柄のブラウスにピンクの刺繍入りのコットンパンツ。センスがどう、こうじゃなく、なぜか素直に好感が持てました。近くの町に買い物に行く様子でした。座るなりBさんがバッグから小さめのカップに入った氷菓子を取り出してAさんに一つ手渡し、「○○へ寄ったらアイスをくれたけど、溶けちまうから食べて。だけどスプーンをくれなかったサ。」 Bさん「いいよ、このまんまカジレば」 ハンカチやティッシュを膝に広げながら、容器に直接口をつけてガリガリと食べ、食べながらも次から次へと話に花が咲いていました。 B「雨が降りそうだね。あんた、窓閉めてきた?」 A「閉めたよ」 B「鍵はかけた?」 A「鍵なんかかけないよ。かけておけば遠くに行ったと(ドロボーは)思うじゃ。かけてなきゃすぐ帰ってくると思うから、その方がいいんだよ」 「また町長選があるな」 「うん、今の町長はもう辞めるんじゃない?」 「もう長すぎるよ。それにあの町長は・・・・・・」 「そうだな、もうよした方がいいんだよ」 この辺の会話はどっちがAかBかは覚えていないのですが、田舎町で、高齢の女性が、たとえ町内のことにしても選挙や政治の話を平気でしていることにも、この二人の仲や人柄が見えるようでヘェと思いました。 B「私は足が大きくて、靴を探すのが大変サ。若い人のような巾が狭いのや先がとんがったのはいやだし」「今のこれは、とても履き良くて気に入ってるだ。」 A「あぁ、私もこれが履き良くてこればっかり履いてるから、こんなになってるよ。」と片足を脱いで裏を見せた。丸く磨り減って穴が空かんばかりのクツ。(盗み見た私は心でクッ、クッ、クッ。失礼!) B[ウワァ、良く履いたじゃ。もう止めナ。今日買いナ。それはゲートボールにでも履けばいいよ。」 こんな会話をしながら、私の存在などまるで無いかのように(本当に見えていなかったのかも?)二人はアイスにかぶりついていたのですが、Aはなかなかうまく口に入らなかった様で苦戦していました。Aが先に食べ終えると、Bはそのカップを黙ってひょいと取り上げてそこに自分の中身を、苦労して移し、更に再び自分のカップに移してまた食べ始めました。見ていたAは「なんだ、捨てるのかと思ったらまだ食べるの?」とケラケラ笑う。私もpu!となるのを頬を膨らませて一所懸命こらえました。 聞こえていない風をしてあらぬ方角に目をやり、一部始終を聞いていましたが、しゃべっている本人たちだって、聞こえていないなんて思ってもいないでしょう。目の前の私の存在はまるで無視してごく普通のボリュームで会話していたのですから。 年齢も奏功しているかもしれないけれど、大げさに言えば、世間体を気にせず自分なりの人生観で生きているというような、毅然とした姿に見えたのは私の重い過ごしでしょうか? こんな会話に人生観云々・・はおかしいですか? でも、持っていた本を読み終えて退屈していたこともあり、とても楽しい数十分でした。 オツにすました感じの特急や新幹線の中では出会えない、鈍行列車の味わいなんですね、これって。 |
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